エクソシスト!(悪魔祓い)対決
玄関を開け中に身を入れる、おそるおそる私の後ろから中の様子を伺うS子さん・・
「こんばんわ」大声でMさんを呼んでみる、「は~い、いま手が離せないので上にあがって来てください」返事があった。
「ふぅ」良かった、「本人は大丈夫そうだね、二階に行ってみよう」・・「そうですね」
玄関から上に真っ直ぐ続く直線の階段をゆっくりと気配を感じながら上がっていく。
「すいません、夕食を作ってたんでチャイムが聞こえませんでした」とMさんがすまなそうに言った

「有り合せの物ですが」食卓テーブに夕食が並べられていた・・
何か違和感がある、家に入る前に感じた強い霊気が全く感じられない、「なぜだ?」独り言をつぶやく・・S子さんは友人でもあるMさんと早くも世間話に盛り上がっている。
霊の気配を感じないまま、進められ缶ビールを2・3本空ける、時計ををみると12時半に成っていた。
「これじゃ、出そうも無いねぇ」と軽口がでる・・「なんか、ご飯を食べに来たような感じだわ」
S子さんもすっかり、リラックスしている様子である。
「せっかく来たんだから、とりあず1時近くになったら電気を消して様子をみよう」
「私、眠たくなってきちゃったわ」と、当の本人であるMさんがソファでコックリし始めた、
「あらら、依頼者が寝てどうするの?」、と言いながら部屋の電気を消していくS子さん。

時間は1時ジャスト、居間の窓から月明かりに照らされ逆光に黒く縁取りされた庭木がぼんやりと見える・・Mさんは完全に寝たようだ。
「いやぁ、オレも眠たくなってきたよ、1時半になったら帰ろう」・・
「そうですね、Mさんも寝ちゃたし、もう起こさないで毛布でも掛けて帰りますか」とS子さん、
「そうだね、もう1時半だ、そろそろ電気をつけてよ」答える私・・「解りました、電気つけますね」
「あらっ、スイッチを押しても電気が点かない!」、「あれぇ、どのスイッチも点かないです!」
「まって!音がする」・・トントン、トントン、トトトン、トトトン、聞き覚えが有る!
「ラップ音だ!出るぞ!」、「S子さんもう電気は点かないよ、ソファに座って動かないで!」
私の強い口調とラップ音にオロオロするS子さんを横目に見ながら、
Mさんを見る!完全に寝ている。(おかしい、これだけ二人が騒いでいるのに起きない?)
どおーん、どおーん、壁を叩くような音に変わる、「この音は!来るぞ!」
カチャッ、金属音がした、居間に続く寝室のドアに二人の眼が行く、ドアノブがゆっくり回る・・
続いてドアがゆっくりと開きだした、「キャーァ!」悲鳴を上げるS子さん!
眠り続けるMさん・・
寝室に何かが入った!「よし、オレも入るからそこに居て!」
「うぅっ!」S子さんは初めて目にする恐怖で声も出ない・・
半開きのドアから少しづつ身体を滑り込ませる・・窓から月明かりが薄っすらと差し込み、
ベットの毛布を照らしている・・
「うっ!こ、これは・・」信じられない!風も無いのに毛布が波打ち動いている。
強い霊気が全身を襲う、窓に背を向け、こっちを伺う白い影 ・・誰か居る!
うっ! 一瞬、呼吸が止まる、つぎに鼓動が早まり恐怖が全身を電流のように走る!

いま眼前に迫る(見えない物)、白い影が動くたびに周りに冷たい空気が流れ、
バサッ!と音を立て棚から物が落ちる!
「ううっ、何なんだ!」経験したことの無い強い力だ!自縛霊や生霊の比ではない・・
形を変えながらゆっくりと移動する。窓のカーテンが揺れ床がきしむ。
足が震える「ちくしょう!」ここで相手に弱みを見せたら終わりだ、最悪、死ぬこととなる。
「お前は誰だ!なぜここに居る」恐怖にかすれた声で問う。
白い影がゆっくり動く!それを眼で追う!口が渇き両脇から冷や汗が下へと伝わる・・
ふと見る、ドアの脇にある大きな鏡に自分が写る、「うっ!」全身の輪郭から薄く光を放っていた!
「身体からオーラーが出ている!」守護神が降臨したのか?

危ない、恐怖に押し潰され逃げる寸前だった!自分から発するオーラーを見て強気に転換する。
「お前はもうここに来てはならない!」、「自分の居る場所へ帰れ!」
言葉ではなく心で念じる。
突然、半開きの寝室のドアが全開に開いた!白い影がスーッとドアの外に消えていく。
・・「ふうぅぅ」肺から絞り出すようなため息と共に全身から力が抜けていく。
続く・・